社会の雑学・豆知識

地理、政治経済、乗り物、観光、宗教、時事についての雑学・うんちく・豆知識・トリビアを集めたサイトです。気になった記事や文章を個人のメモとして投稿しています

子供たちに教えたい起業人:寺田千代乃さん〜引っ越しをアート(芸術)にした寺田千代乃さんの気配り、心遣いを学ぶ

アートコーポレーション社長 寺田千代乃さん

♪荷造りご無用、0123、アート引っ越しセンターへ。このコマーシャルソングがテレビやラジオから流れてきたのは25年前。思わず口ずさんでしまう軽快なメロディーが全国に轟(とどろ)き、“引っ越し”と言えば“アート引越センター”と当時お引越屋の代名詞にまでなりました。

 

その後、「パンダマークの引越の堺」や「ゾウのマークの松本引越センター」「アリさんマークの引越社」など続々と追随(ついずい)する企業が生まれ、厳しい競争業界のなか、きめ細かな独自のサービスを展開し、今も業界のトップを守り続けています。その「アートコーポレーション」を細腕で率いているのが、社長の寺田千代乃さん。わずか30歳で夫と運送会社を設立し、その後、業界初めての引越専門運送会社に。次々と新しいサービスを始め、引越をアートにまでした。

 

商売の秘訣(ひけつ)は、他者への深い思いやり

 

商売が上手な人は、他人への思いやりが深い人です。どれだけお客を満足させるか、どれだけお客様の立場に立って考えられるか、それがモノを売る決め手になるのです。それはなかなかできそうでできないことです。

生まれたての赤ん坊は、世の中の何もかもが自分中心に動くものと思っています。それが大人になるにつれてだんだん他人のことを冷静に考えられるようになります。商売が上手な人は、最も進化した大人なのでしょう。なぜならば、身を挺(てい)して他者の気持ちになって仕事ができるのですから。

もちろん、大勢の人を雇(やと)って商売をするには、ただ単に他人を思いやるだけではできません。自分の考えを従業員に説明し、納得させ、実行させる気強さ、辛抱強さ、忍耐強さがなければ為し得ないことです。しかし商売の基本は他者への深い思いやりであることは間違いありません。

徹底したCS(Custmer Satisfaction)の追求 

CS(Cusromer Satisfaction)とは顧客満足(こきゃくまんぞく)のこと。企業にとって、お客様にどれだけ満足していただけるか、これが徹底しているほど成長の度合いが大きいのは確かです。

寺田千代乃社長は、徹底したCS(Cusromer Satisfaction)を追求しました。


「10円玉袋」

引っ越し費用の見積もりに伺う(うかが)う社員が、袋にピカピカの10円玉を2枚入れ、電話機のそばにだまって置いてくきます。1枚は電話をいただいたことへの感謝、もう一枚は契約の電話をかけてほしいという思いを込めて置くのだそうです。


「引っ越し作業の際に新品の靴下への履き替え」

引っ越し先の家は、ほとんどが新築の家、またはリハウスしたきれいな家ばかりです。廊下も各部屋もピカピカ、そこへ汚れた靴下でツカツカ入って部屋を汚してしまっては、家を買ったばかりのお客様に不快な気持ちを与えます。「いやだな、せっかくのきれいな家が、自分が住まないうちに汚されてしまうのは・・・」と思うに違いありません。引っ越しの仕事はたいへんな重労働で足の裏にもいっぱい汗をかいてしまいますので、そこで頻繁(ひんぱん)に靴下を履(は)き替えます。ことはお家の持ち主様への細心の心遣(こころづか)いです。

「運搬中の殺虫サービス」

日頃台所や押し入れの整理整頓をしている主婦なら思わず「ありがたい」と思うはず。新築の上に荷物を置いてすぐに中からゴキブリ・・・などはお目にかかりたくありません。せっかくの新鮮な気持ちが台無しになります。そればかりでないく、引っ越しはたいへんな手間がかかる仕事、その間も食事の用意や洗濯など日常生活をストップ止めるわけには行きません。少しでも時間を有効にするためにも「運搬中」にサービスをしてくれることもうれしいところです。

「レディースパック」

女性の一人住まいでは部屋の中を男性には見られたくないものです。そこで部屋の片付けはすべて女性で行う、女性のお客様に優しい心遣いの「レディースパック」。

「家具移動サービス」

新らしい家の部屋のレイアウトは、なかなかしっくり定まらないものです。そこで、引っ越しした日から一年間無料で家具移動を行う「家具移動サービス」があります。

 

どれもこれも。なんと心憎いまでお客様に気配り、心配りでしょう。

「それぐらいなら、私も気づきます」という人もいるかもしれませんが、大事なのは実行すること。他人の気持ちになって優しくするのは、口で言うのは簡単だが、なかなか実行できないものです。しかもそれを大勢の従業員にまでさせるのは、並の努力でできるものではありません。「優しさ」を実行するには「強さ」と「粘り」と「信念」がいる。寺田さんには、それだけのものを持ち合わせているのです。

それにしても155㎝。47kgの身体のどこにそれだけのパワーが潜(ひそ)んでいるのでしょうね。

授業員に自助(じじょ)の精神を培う、 ES(employee Satisfaction)も経営の基軸

 

寺田さんの心遣いは、お客様だけではありません。従業員にも細心の心配りをします。


アートコーポレーションの長距離用トラックは、車のシートを最良のものに改良しています。寺田さん自身、運送業を初めてすぐの頃にトラックを運転していたので、車のシートの善し悪しがどれだけ運転の快適さに繋(つな)がるかがよくわかる。

また、頑張った人にはインセンティブ(誘因)を出す制度もいち早く取り入れました。アートコーポレーションは従業員一人一人が夢を持ち、その夢の実現のために目標を設定して一つ一つを達成するように努力すれば、結果的にインセンティブが入る、という仕組みにしています。従業員には、何でもかんでも与えるのではなく、自助の精神を培(つちか)ってもらうように心がけています。自助の精神が育たないと、その人が成長しません。

「仕事はしんどいものです。それを楽しくするためには、自分自身で工夫していくしかありません。」と寺田社長ははっきり言います。従業員には顧客とはまた違った、親心で接しているのです。

創業時代

 

これだけ他者への思いやりを持ち、なおかつ厳しい同業者との競争にも勝ち続けてこられた強い指導力を持つ寺田千代乃さんは、どのような生い立ちからそのような力を自ら培ってきたのでしょうか。

寺田千代乃さんは、本好きの父と、グチ一つ言わず夫を支えた母との間に長女として神戸に生まれました。育ちは大阪、中学をでてすぐに社会にでました。高校に行けない理由はなかったのですが、「できるなら早く働きたかった」と言います。

車好きのトラック運転手の彼と出会い、21歳で結婚、ほぼそれと同時にトラック2台で夫と運送業を始めました。子供2人ができ、会社もようやく軌道(きどう)に乗ったころ、第一次石油ショックが到来、ガソリンの値段が急激に上がり、仕事が激減してしまいました。

なんとかして従業員の生活を守らなければ、何か良い仕事をさがさなければ、と必死になっているとき、ある日新聞を読んでいると「引っ越し貧乏、大阪で150億円、京都で120億円もの費用が引っ越しに使われている」と書いてある記事を見つけて「引っ越し専用」の運送会社を思いついたそうです。

当時はまだ、引っ越し運搬は運送業者にとっては片手間の仕事でしかなかったのです。「引っ越し専門」と言う運送業者が認知されておらず、寺田さんが引っ越し専業の申請を役所に出したときも、「前例がない」となかなか認めてくれませんでした。3回目でようやく受理されたそうだ。

電話帳のカタカナのア

 

「引っ越し専門」で困難なことは、それまでの運送業と違い、特定の業者から仕事を受けるのではなく、不特定多数の一般家庭から仕事を受け入れることででした。どのようにして仕事をゲットするかが問題でした。寺田さんは、そこで、電話帳に注目しました。一番はじめに書かれるようカタカナのアを頭文字に社名を「アート引越センター」として、引っ越しを専門にする運送会社であることを強調した。次に電話番号を0123と電話しやすく、しかも全国統一、誰でもすぐに覚えられる番号にしました。そして、15秒のCMを三ヶ月、3千万円もかかる高額なテレビCMを、多額の借金をして流しました。

寺田さんのアイデアと必死の取り組みのおかげで、会社創業8年目にして年商100億円にまで成長した。以来25年間、クロネコヤマトや堺引越センターなどの強豪(きょうごう)と競いなら、常に業界のトップを走り続けてきました。

女性ならではの気配りと、男性的な気概(きがい)を 併(あわ)せ持つ寺田千代乃さん

 

アートコーポレーションの強みは、冒頭にも記述した、徹底したCSの追求でしょう。CSの追求は、企業であればどこでも行われます。しかし、他社を寄せ付けないアートコーポレーションのCSは、やはり寺田さんの女性ならではのお客様に対する気配りではないでしょうか。


寺田さんは、従業員に対し「首にタオルを巻かない、制服のファスナーをきちんと締める、新しい靴下に履き替える・・」など、細かいマナーやサービスに心がけるよう徹底して言うそうですが、これは容易なことではありません。寺田さんにはあらゆる犠牲を払っても事業をやるという気概があるから徹底できるのだと思われます。優しい寺田さんの顔から想像できない気迫があるでしょう。

仕事に性別の区別はない

 

『女性社長』ということについて、寺田さんは、なんでも「女性初」とか「女性だから」とか性別でとやかく言われるのは、あまり好きではないそうです。

「女性が社会に進出することは良いことと思います。特に少子高齢化がすすみ労働人口が不足気味になり、ますます重要なことになってきています。ただ、女性の管理職登用に数値目標を設けたりするのは違和感を感じます。私はフェミニストではありません。仕事をする上で男女の別はないと考えています」とキッパリ言います。男女共同参画社会などと言って、女性が優遇されるのはおかしなことで、男女共にそれぞれの持ち味を生かして仕事を進めていくべきだと考えておられるようです。

金儲けだけでなく、世のため人のため

 

寺田さんはまた、ボランティア活動にも熱心で、アートコーポレーションでは管理職に年間7日間、駅前の掃除とか、NPO活動への参加などのボランティアを義務づけています。

寺田さん自身も、講演などのボランティア活動を熱心に取り組んでおられます。講演は基本的にすべて無償。有償の講演は受けないそうです。

「ボランティアをすると優しい気持ちになれる。今の日本人ならほとんどの人は食べることに困らないのだから、自分の子供や孫以外にも、もっと広く他人の目を向けることが必要ではないでしょうか。ボランティア活動は、それで誰かが助かる、という思いより、自分が大きな世界の一員である、という感覚が生まれる」と言います。

今回、寺田さんは、関西経済同友会の代表幹事を引き受けられましたが、この仕事も報酬(ほうしゅう)がでるわけではなく、財界活動の一環として、世のため、人のために貢献(こうけん)できるべく方法を研究し、学び、実践していくなかで、自らも成長していくというものであるそうです。


経済力は民族の優しさ、思いやり、勤勉、誠実のバロメーター


日本は豊かな国です。世界のどの国と比べても負けない豊かな国です。

その豊かさは、数多くの企業の弛(たゆ)まぬ努力の賜物(たまもの)と言っても言い過ぎではありません。企業で働くみなさんのがんばり、がこの豊かな日本を創っているのです。

「人が求めるところにビジネスがある」と言われますが、食う、着る、住む、と言った基本的な生活はほぼ保証された今日の社会では、「どれだけお客様のしあわせ、満足を願うか」によってビジネスの成功が決まります。ゆえに、ビジネスが活発に行われるほど、人々がしあわせで満足した生活が営まれるのです。

ビジネスは決して楽なものではありませんが、たがいに競争して成長しあうという利点がある。それが人々の暮らしに満足を与えることに繋がるのです。

経済力は民族の優しさ、思いやり、勤勉、誠実のバロメーターです。世界に轟(とどろ)く日本の経済力は、まさに私たち日本人の誇りです。

この国に代表される経営者でおられる寺田千代乃さんには、従業員、顧客のみならず日本中、世界中の人々をしあわせにする力を秘めた天照大神(あまてらすおおみのかみ)のような力を兼ね備えておられるのでしょう。